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LLM/AI Agent時代だからこそ『ダブルハーベスト』が役に立つ

以下の記事は、拙著『ダブルハーベスト──勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン』(2021年4月刊)の紹介です。

LLMやAI Agentが当たり前になってきた今だからこそ、この内容がより一層リアルになってきているなと感じます。

これからのビジネスにとって「AIがどのように生きてくるのか?」という問いに対し、本書が掲げる「戦略×AI」の新しい視点、そして「ダブルハーベストループ」の肝をご紹介します。



なぜいま「AI×戦略」が必要なのか?


近年、「AIが必要だ」「DXを進めねばならない」という声は数えきれないほど耳にします。しかし多くの現場が抱えるのは「どこから始めればいいのかわからない」「具体的な使い道がイメージできない」という悩みではないでしょうか。「AI技術者が社内にいない」「大手の事例を横目にしても真似できる気がしない」──こうした空気感に押され、AI導入へ一歩を踏み出せない企業は少なくありません。


しかしこの本では「AIを技術としてのみ捉えるから進まないのだ」と主張しています。AIは、それ単体を導入して効率化を狙う“パーツ”のような存在ではなく、「勝ち続ける仕組み」を構築するための“戦略デザインの中核”だ、というわけです。本書は「技術」から「戦略」としてのAIに目を向け、いかにして競合優位を築き、持続的に勝ち続けるのか──そのための“実装可能なアプローチ”をまとめた一冊となっています。


「ダブルハーベスト」とは何か?


本書のキーワードはズバリ「ダブルハーベストループ」です。これはいわゆる「ループ構造」を重層的に回すことで、ビジネスにおいて 1度きりでは終わらない成果 を永続的に生み出す概念を指します。

そもそもAIの魅力は「学習して賢くなる」ことであり、導入後の継続運用によってAIはますます精度を高めていきます。にもかかわらず、「最初にAIを導入して終わり」では、限られた範囲でのコスト削減にとどまりがち。そこで重要になるのが、「AIを育て続けるループを、どのようにビジネスの“核”に組み込むか」という点です。


本書が提唱する「ハーベストループ(収穫のループ)」とは、実際のオペレーションやユーザー行動の中で自然にデータを蓄積し、それをAIの成長材料として継続的に食べさせ、さらに競争優位を強化していく仕組みです。しかも「一重」ではなく「二重・三重」にループを回す設計=ダブルハーベスト化することで、「最初の優位にあぐらをかいていたら追いつかれた」というリスクから脱却し、“後発では到底真似できない”参入障壁を構築 できるのです。


AIがもたらす5つの最終価値

本書は戦略デザインを具体化するため、「AIで何を実現するか?」という問いに対し、以下の5つの“最終価値(エンドバリュー)”を整理しています。

  1. 売上増大

  2. コスト削減

  3. リスク/損失予測

  4. UX(顧客体験)向上

  5. R&D(研究開発)加速

AIは単なる自動化ツールにとどまらず、これら5つの価値を 具体的にどこまで突き詰めるか という“設計視点”が非常に重要だと著者は説きます。既存のRPA導入やレコメンドエンジンの導入で「まあまあ成果は出た」という成功体験があっても、その先にある「データをどのように収穫し、次なるイノベーションへ循環させるか」がないままでは“AIの本当の強み”を活かしきれていないのです。


「ヒューマン・イン・ザ・ループ」を忘れない

AIに仕事を丸投げしても、現状では“精度100%”のAIなど存在しません。ここで紹介される「ヒューマン・イン・ザ・ループ」「エキスパート・イン・ザ・ループ」「ユーザー・イン・ザ・ループ」といった発想は、AIの自動化+人間の判断 を柔軟に組み合わせる実務的なフレームワークです。


「精度が7割しか出ないならAIは使えない」という“間違った諦観”を排し、AIが苦手な3割の部分を人間が埋めながら、残り7割をAIでカバーし、そこからさらに精度を高めていく──これが「続けるほど得をする」ループを実装する鍵だ、と本書は強調します。そして弁護士の例のように、エキスパートの専門知識をAIが補佐することで、人間は退屈な作業から解放され、自身の専門分野に集中できる。それがまたAIの品質をさらに高めるフィードバックとなり、エキスパートも成長し、ユーザーの体験も良くなる。こうした「AIと人が共に賢くなる構造」をどうデザインするかが、勝ち続ける企業を生むカギなのです。


マネタイズ戦略:ただ“作る”だけでは終わらない


ハーベストループは、単にAIを完成させるだけではなく、その成果をいかに 持続的な経営成果 につなげるかという発想とセットです。モービルアイのリアルタイムマップ構築のような事例では、一度車載カメラを大量配備すると、走れば走るほど“データが集まって精度が向上する→さらにユーザーが増える→マップが高精細化し、他社を寄せつけなくなる”という好循環を生み出し、結果的に“勝ち続ける仕組み”を得ました。


さらに、ペイメントアプリのように決済データ を活用して店舗の信用スコアを算出し、銀行との提携による小口融資や低金利の仕組みをつくり上げる──という二重ループが展開された例もあります。一見すると無関係に見えるサービス間を“データのループ”で繋ぎ、競合が簡単には追随できない参入障壁を築くことで、ビジネスを一気に飛躍させているのです。


実装ステップを丁寧に解説

AI導入に失敗しがちな理由のひとつは「ソフトウェア開発」と「AIプロジェクト」の違いを理解しないまま、ウォーターフォール的な管理をしてしまうことにあります。

本書では


  • 初期データの準備

  • AIモデルの試験(PoC)

  • UI/UX設計

  • 導入後のクオリティチェック


などを含む9つのステップを見通しよく示し、「エクスペクテーションサンドイッチ」と呼ばれる期待値マネジメント法を紹介。どのフェーズで、どこまでを確約し、どこに自由度を残しておくか といったプロジェクトマネジメントのノウハウが、技術だけでなく経営サイドにも大いに役立つはずです。


AI時代の戦い方:パーパス(WHY)と結びつける


最後に本書が訴えるのは、「AIは手段に過ぎないが、その手段を使いこなすかどうかで新時代の勝負が決まる」ということ。著者の堀田氏は「技術開発が本当に活きるのは、自社のパーパス(なぜ、その事業をやるのか)と結びついたとき」だと強調します。

  • 自分たちのビジネスは何のために存在し、どんな顧客体験(UX)を実現したいのか?

  • その実現を 戦略デザイン+AI でどう仕掛けるか?

  • それを持続的な競合優位に変えていく「ダブルハーベスト」はどう設計すればよいのか?

これらを具体的に示してくれるため、「従来型のビジネスモデルから抜け出したい」「DX改革を真に成功させたい」「パーパスドリブンな企業文化を育てたい」という方々には必読の一冊です。


おわりに──AIの時代にこそ、ビジョンと仕組みがものを言う


『ダブルハーベスト──勝ち続ける仕組みをつくるAI時代の戦略デザイン』は、技術的な解説とともに、AI導入を“戦略”と“仕組み”の両面から捉え直すことの意義を示してくれます。「AI技術だけを入手すれば勝てる」という古い幻想を打ち砕き、「人×AIのコラボレーション」が創造する可能性を数多くの事例とフレームワークで提示。さらに、日本企業が国際市場での競争力を取り戻すためにどう変わるべきか、熱いメッセージを込めています。


AI時代の“正しい勝ち方”を探すあらゆる企業・個人に、実践的なヒントと具体的なシナリオを与えてくれる、この新しい一冊。きっとあなたの中にある「AIをどう使うか?」という漠然とした疑問を、「どう戦略化して、どう勝ち続けるか」へと昇華させてくれるはずです。今こそ、次の時代のスタンダードとなる“戦略+AI”の姿を学び取り、周囲に先んじてダブルハーベストのループを回し始めてみてください。


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